カール・コルビ森林官と訪ねるドイツの森林


6月に東武トップツアーズ株式会社と弊社で企画運営したKWF-Tagung2024ドイツ森林林業木材産業関連視察ではカール・コルビ森林官にドイツの森林管理経営について伺いました。カール・コルビ森林官はCralisheim市の森林官を長年勤められ何度も来日して日本の森林についても知識が豊富な方です。

今回ご説明いただいたCralisheim市は人口約35000人、所有する森林約450haは標高400‐450m付近に広がっています。

Cralisheim市の施業図

ドイツでは広葉樹林、混合林が林業に利用され、市町村有林は市町村が所有、経営する病院や福祉施設の費用に充てられることがあるとのことでした。土質は石鉱が多く農林業に向いているそうです。

ドイツやオーストリアの森林には屋根型林道(凸型路面)が言われる森林基幹道は30㎝ぐらい掘ってから石や土を入れてローラーや排土板で表面を平らにしてかため、両脇を7%ぐらいの傾斜をつけて道の両脇につくった溝に道の水が流れ落ちるように作られています。また、ドイツでは60mおきに横断溝も入れてあると言うことでした。ドイツではこの森林基幹道作設には補助金があるそうです。(オーストリアでは基本的に自然災害がない限りは補助金はありません)

この地域では8月になって植物の種が出来てから森林基幹道のまわりの草を刈るようにして生物の多様性を維持しているそうです。

森林基幹道以外に森林基幹道と森林基幹道をつなぐように40mおきにpathと言われるハーベスタやフォワーダなどの林業機械が通る道があります。40mおきと言うのは樹高の2倍を意識しているそうです。ドイツやオーストリアの林業機械はキャタピラーよりもホイール(タイヤ)ベースのものが多く見受けられます。重さ10トン級のものが森林の中に入れば土地がしまって硬くなってしまいます。その状況をパイプと水を使って説明してもらいました。pathのところに立てたパイプの水はなかなか土に浸透せず、森林の中に立てたパイプの水はあっと言う間に土に浸透してなくなってしまいました。このように水が浸透しない土地は酸素濃度が薄いので植物の生長にはマイナス要素です。

広葉樹施業についても話を伺いました。カシ、ブナ、シラカバ、サクラ、ボダイジュなど樹種の多様性が年々変化する気候の対策になっていると言うことでした。

ドイツでは基本は天然更新で間伐することで出来た隙間に育った立木を成木させます。皆伐は禁止されていますが、風倒の被害、虫害による例外があり、その場合は土質を示した図面があるので適した樹種を選んで混ぜて植えるそうです。ちなみに隣国のオーストリアは2haまでの皆伐は可能です。

カシは140年生を目指して、その頃に最高の値段で売れると思われる木(将来木)を選んで育てているそうです。140年生のカシの昨今の価格は1㎥≒700€ぐらいと言われていました。

次に狩猟についても伺いました。1850年以降、一般の人も狩猟が出来るようになりました。それまでは貴族にしか認められていなかったことから高貴な人だけが出来るものと言うイメージが今でも持ち続けられているようです。森林官にとって狩猟は仕事の一つであることはドイツもオーストリアも同じようです。ドイツでは100ha当たり20頭のシカを取っていいそうです。私たちもシカ肉の料理を味わいました。

最後にお伺いしたのはレクリエーションとしての森林です。視察したCralisheimの森林の中には遊具や体を鍛えるための設備があり、これらは森林官が作ったものだと言うことでした。市民は自由に使うことが出来て、それらを通して森林への親しみ、理解が増すのだと言うことです。しかし維持管理にはお金もかかるとのことで、週に3回の掃除など市が負担しているとのことでした。

昨今よく耳にするSustanable=持続性と言う言葉。これは森林から生まれた言葉だとコルビ森林官から教わりました。コルビ森林官、一日ご説明いただき大変勉強になりました。ありがとうございました。

前田 多恵子