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2016年4月13日 オーストリア・ヨーロッパ関連
視察先紹介〜オーストリア最新の林業作業システム視察【案内役 ウィーン土壌大学・スタンファー教授】
世界最大の林業展inドイツ&オーストリア最新の林業視察研修では、オーストリアの最新の林業作業システムを視察することも一つのテーマとなっております。そこで今回はオーストリアの伐採・搬出作業システム研究者の第一人者であるウィーン土壌大学(BOKU)の林業工学学科のカール・スタンファー教授にオーストリアの最新の林業作業システム、特に収穫における作業システムについてご講演いただき、実際の現場をご案内いただきます。
カール・スタンファー教授は次々と新しい取り組みが行われるオーストリアの林業作業システムの、特に収穫分野における効率性や安全性を科学的見地から調査、分析、研究報告を行いオーストリアの林業の発展と安全性向上に貢献されています。「森で儲けて何が悪い」と言う彼の研究は実質的で、林業機械メーカーや素材生産会社と定期的に連絡を取り日々現場で起きている事象や現象を聞き、それらの事象や現象についていち早く現場に出て追跡、検証、分析を行い、結果を機械メーカーや素材生産会社と共有しています。昨年11月に長野で行われたフォーラムでも講演され、会場は立ち見が出るほど聴衆であふれ彼のユーモア満載の内容に余談ではありますが、筆者はドイツ語がわからないことを歯がゆく思いました。
スタンファー教授の近年の講演資料を見ていると労働負荷の軽減や安全性が最終的には高い生産性につながっていると言うことを林業作業システムの研究者として科学的に証明しようという彼の強いこだわりを感じます。決して大型の林業機械だけではなく超高強力繊維ロープやオートチョーカーなど小物にもスタンファー教授は注目しています。例えば、超高強力繊維ロープです。スタンファー教授の調査によると22㎜径のワイヤーロープと26㎜径の超高強力繊維ロープを傾斜35%の斜面を35メートル引っ張って上るのに、22㎜径のワイヤーロープは2人がかりで5分かかるのに対して、26㎜径の超高強力繊維ロープは1人で3分少々しかかからず、距離が遠くなればなるほど所要時間に開きが見られます。
これは弊社の前身である前田林業㈱がワイヤーロープと超高強力繊維ロープを持って歩いた場合の心拍数を比較した際、ワイヤーロープを持って歩いた場合は大幅に心拍数が上がったのに対して超高強力繊維ロープを持って歩いた場合は何も持たずに歩いた場合の心拍数と何ら変わらなかった調査結果とも合致していると言えます。(旧前田林業㈱による超高強力繊維ロープの調査結果は以下のURLからご覧になれます。)
http://sanyo-trade.com/wp-content/themes/sanyo/madia/H20reportrope.PDF
そのスタンファー教授が最近取り組んでいるのが伐倒時の事故の軽減です。日本と同じ山岳林業地帯であるオーストリアでは傾斜30%以上が約60%にもなります。
そのため、オーストリアでも伐倒の大半はチェーンソーが使われています。
(2010年調査結果)
日本でも伐倒中の死亡事故が後を絶ちませんが、スタンファー教授も100万㎥に3-10件の死亡事故が発生しているのではないだろうかと予想しています。(全世界規模・・・。)そこでスタンファー教授は最近性能が向上し、傾斜30%前後の斜面でも使用が出来るようになったケーブル式のハーベスタによる伐倒の安全性と効率性を科学的に証明し数値で示すことで現場での普及を促しています。
以前は傾斜地でのハーベスタ作業はハーベスタの重心が定まらず横転する事故がありました。
しかし、機械の改良とワイヤーでハーベスタを補助することで傾斜地でも安全に伐倒することが可能になりました。ニュージーランドでは2012年にハーベスタの重量に対して補助するワイヤーの基準も定められています。重い重量のハーベスタを森林内に入れることは林地への負担が大きくなりますが、ワイヤーで補助することで力が分散し接地面への負担が軽減することも「力の分散の法則」からわかっています。
図引用元 カール・スタンファー教授の講演資料より
加えてケーブルハーベスタでの伐倒ははチェーンソーでの伐倒より残存木へのダメージを減らせることも調査結果で出ています。
ケーブル式ハーベスタにケーブル式フォワーダを組み合わせることで、作業道で潰される林地が減少し、それが結果的に収入の増加をもたらし林業経営の安定化にもつながるとスタンファー教授は述べています。
そして、図面をケーブル式ハーベスタとケーブル式フォワーダの作業範囲を色付けしてみると意外に多いことに気付くだろうとも話されています。
スタンファー教授は新入生に必ずされる質問があるそうです。
「森林内の木を出すして収入を得るにはまずはどうしたらいいか?」
大半の学生は「作業道を作ることです。」と答えるそうです。
スタンファー教授は「それは違う」と言われます。「まずやるべきことはどの作業システム(どの機械)を用いて伐採・搬出するかを考えて決めることだ。それから、それに必要な作業道の設計と開設を行うべきである。」
教え子たちはいずれオーストリアの森林官や官公庁の官僚などとして巣立って行きます。こうした将来を見込んだ全体を捉えた構想計画を立てられる人材育成がオーストリア林業がこの先も発展する力の源になっているのではないでしょうか?
さあ、カール・スタンファー教授は日本人の私たちに一体何を語ってくれるのでしょうか?
【締切間近】世界最大の林業展inドイツ&オーストリア最新の林業視察研修の詳細は下記をご覧下さい。
http://sanyo-trade.com/news/tourkwfandaustria-3/1787/
カール・スタンファー教授略歴
1991年 ウィーン土壌大学で学士を取得
1996年 博士号取得
2012年 ウィーン土壌大学林業工学学科教授就任
講演資料
フォーラムin長野講演資料(日本語)
http://www.advantageaustria.org/jp/events/2015.11.05_Stampfer_JP.pdf
http://www.sumfak.unizg.hr/upload/sec_001/ins_004/otvaranje/harvesting_steep_terrain_zagreb2015.pdf
急傾斜地での収穫システム’英語)
https://www.formec.org/images/proceedings/2015/A0_1_Visser_2015_207.pdf